悲しくなるのです

彼が地面に落ちていた私の頭を拾って言いました。
「この顔でなければ好きになっていたかもしれないが、どうにも駄目だ
どうしても好きになってあげられないのだ」
私は目を閉じてそれを聞きながら、私の両耳を包むように抱いてくれている手のひらの暖かさを感じていました。
ただ悲しくなっただけなのですが、無理なものは無理なのは仕方がないことだと思いました。
頭だけで首から下の体がないのでどこにもいけないから好きにならなくてもずっと持っていてくれないものかと願いました。

私の頭を持つ手のひらの感覚が変わったので目を開けたらきぐるみのくまの手でした。
ふかふかであたたかい奥にさっきまでの手のかんじがありました。
きぐるみのくまの頭で私を見下ろして
「かわいそうと思うかね」
と言うので私はかわいそうなひとになりました。
くまは私を掲げたままくくく、と笑い私はまた目を閉じました。

次に目を開けると彼はきぐるみの頭だけ被っていて
私を右腕で小脇に抱え左手は真っ黒な拳銃を持ち
きぐるみの自分のこめかみに銃口を当てていました。
真っ白な箱のような部屋にいたので赤い血はとても映えました。
頭がなくなって彼は少しふらふらしていましたが二、三度首を振ったらしゃっきりとして私の目蓋に手のひらを当てました。
とてもあたたかい手のひら。

手のひらが離れて目を開けたら私に体がありました。
ひとりになりました。

さっきよりずっと悲しくなりました。