すらりとにやる

頭の禿げた黄色い肌の男の側頭を両手のひらでぺちぺち叩きながら
「あこはどこだ、わこはだれだ、あこはどこだ」と問い続けた。
手のひらの感触がぺたぺたとしてきて段々わけがわからなくなってきた。
あこは私の恋人で私は男の子だった。
禿げた男は肌一面に赤い入れ墨があって顔はトカゲのような釣り目で目も口もナイフで切ったすらりとした傷跡のようなものでときどき
「あこをまもるしごとです、あこをさらうしごとです」と言ってにやりと笑うので僕は心を冷たくして側頭をたたき続けてやわらかいあこの体を想った。