ハローハロー

寒い寒い日のなかの、少しだけ暖かい日に生まれた男は駅のホームに立っていた。
行き先は特に無く、バイト先に行くという行き先はあるけれど足は惰性で向かっていく感じで少しだるかった。
俺は一ヶ所に落ち着いてしてしまう男だからここにいる、と何度か彼は言った。
実際に彼は町に住んでもう五年で五年目にはようやく初めての恋人もできて、ますます町に落ち着いて馴染んでいた。
最近は町に、というより恋人に落ち着いているような気もしている。

恋人は男がいつかどこかへ行ってしまうのだろうということを考えて時々軽く泣くのだが、
男には恋人こそ自分を置いていつかどこかへ行ってしまうのだろうと思えてならない。
ぼんやりとした不安は誰にでもある。
恋人の温い涙の塩っぱさを思う。
電車がきたので乗り込んだ。
環境が変わるとそこに落ち着こうとなるので仕事をしてる間は仕事のことしか悩みが無い。
店長とは反りが合わないが仕事ぶりは認めている。
仕事以外では付き合いたくないと思っているが、秘密。