心中。

寛一が都に心中しようと言われて首を絞められた。
あっけなく寛一はしんだ。
都の来ていた赤い服が女郎の肌着のようだなあと思いながらしんだ。
都もしんだ。

折り重なる二人を発見したのははるかだった。
恐いこわいと思いながらも近づいてみると急に寛一の目がぱちりと開いてにこりと微笑んだのではるかは思わず
わたしといっしょににげよう
と言ってしまった、言ってしまってから寛一が頷いたら取り返しのつかないことになるような気がして、
わあ、と叫ぶと岩を拾って寛一の頭に振り下ろした。

振り下ろした岩は寛一の耳傍にめり込んだ。
はるかは、こわい恐いこわい恐いこわい事をしてしまったと思った。
寛一は死ななかった。
都も死ななかった。
誰も死ななかったのに私だけがこんなに恐い思いをしている、とはるかは泣きながら思った。
泣きながらはるかがしんだ。
いつのまにか私だけがしんでるし、とだんだん気が薄れていく中で思った。