春、その四。

古くてがたがたなバスに揺られて二時間以上たつが、いつまで経っても妻の住む土地へ辿り着かない。
やっぱり妻はわっちにもう会いたくないのかもしれない。
わっちらの間には ふかい 悲しみがあって
妻は
ふたり 一緒にいるよりもいっそ遠くはなれていたほうがいつまでも愛し続けていられると
思ったのか と、
距離の遠さを心の距離と錯覚してしまうくらいとにかく遠いのだ妻の住む場所は。

空が異様に高くてはらはらする。

一年たって、なぜ急に妻を探す気になったのかよく分からない。