たぬき。
あたたかく、柔らかい光のなかに音楽が満ちていた。
ゆったりとしたリズムに体を揺らしゆらゆらと漂っているうちに
いつしか揺らぎは踊りに変わっていた。
腕と足がじんわりと痺れて頭のなかは生温い液体が、滲みだして満ちている。
踊っていたらいつのまにか一人の人間が目の前に座っていた。
人間の、男は手を伸ばして私をくるりと回転させるとあぐらをかいた足の上に私を座らせた。
男は私の腹を撫でた。
狸の腹はすべすべするなあ。
つぶやいて腹を撫でたりつついたりする。
タヌタタン、タタン、タタンタタンタタン……
男はつぶやきながら腹を撫でる。
小さな声でつぶやき続けるその音はだんだん金属と金属がぶつかってたてる音になり
電車は目的地までまだあと十駅近くあって暇で仕方がない。
家族へのお土産に、駅で胡麻団子を買った。
濃いめに緑茶を煎れてお茶請けにしよう。
目の前には四人の女子が座っていた。
みんな何かしらものを食っていた。
両端のふたりは菓子パンを頬張り挟まれたふたりはチョコスナックを食べている。
両端は痩せていて真ん中は太っている。
セーラー服の少女たちは合唱コンクールの練習をはじめたらしく、太っている少女が片手で腿を叩いて拍子をとる。
タン、タタンタタンタン、タン、タン、タタン……
音はリズミカルに跳ねて床と靴が当たる音になって跳躍も羽のような美しいダンサーの踊りになった。
タタンタタンタタンタン、タン、タン、タン!
踊りの音が打楽器の音に変わり、破裂した。
目の前で紙吹雪が舞い火薬の匂いがした。
お誕生日おめでとう、と目の前の少女がいい私に手を差し伸べた。
手を握ると、しっとり少し冷たかった。