[待ち街]つづきはないのです

真夜中二時すぎ、自転車で三駅隣にある二十四時間営業の漫画喫茶に走った。

道がとても真っ暗で静かでとても、恐かったので、ウォークマンから聞こえる唯一頼りにすることのできる爆音の音楽の向こうにはきっと凄く、恐ろしいものや悲しいものがじっと息をひそめて隠れているのだと思った。

そちらにきをとられるな、あしをただうごかすんだ。

汗だくになって辿り着いたら膝掛を借りて包まってずっとゲームをしていた。
冷房がききすぎてうすらさむかった。
利用客はまばらで、廃墟みたいだった。

借りたゲームはRPG、冒険の記録が付けられないから一晩かぎりのお付き合い。
そうは思っても、キャラクターは自分の分身なのに自分はすごく残酷なことをしているような気がした。

なかまをあつめてどうくつにもぐってたたかって

戦って、戦っていたらいつのまかレベルがあがっていつのまにか殺戮、殺戮、殺戮になっていていた。
これもまた残酷なこと。
残酷に思うことは飽きたのであとはずっと雑誌を読んでいた。


ただひたすらじかんがすぎるのをまっていた。


六時間パックの残りが一時間になったら急に帰るのが嫌になった。

始発はとっくにでているし、通勤ラッシュも過ぎている。
外に出たらきっと明るくて清々しい気分になるにちがいない。
ゆっくり自転車を押して散歩して帰って朝を満喫すればいい。

そう思って清算して外に出たら外は朝だったけれど外は夜の延長だった。


ねむらないであさをむかえたひとにとって、つぎのひはまえのひのつづきでしかない。


音がたくさん溢れているのに耳の中には入れたくなくて、帰り道もヘッドホンからは頼れる爆音がしていた。



家についてそろりと部屋に忍び込むと何にも知らないで私がいなくなってから帰ってくるまで眠りこけている恋人がいて今もまだ寝ていて、それを見たら涙が出てきた。

何にもなかったけれど、あの静かで暗い夜に私は誰かに襲われて犯されていたような気になっだ。

何もなかったけれど、知らない男の人の腕のなかにいたような気になった。

彼は変わらず眠り続けている。

自分がとてもぼろぼろになったような気がした。

すべて全て妄想だけれど、わざと傷ついた気持ちになろうとしているように思えてわたしはきっと心が汚れてしまったのだと思った。

こえがもれるから、まるくなってないた。


今起きてくれたらきっと私は何もなかったように笑って、もやもやは押し込めて笑って、そしてまた穏やかで愛しい生活が続けられる。

眠る顔に口付けをしたら、ううん、と少し声を出して顔を軽くかいて寝返りを打った。

よかった、起きなくて。
起きたらきっとどこへもいけない。
そう思ってしまった。

すごくすごく大好きだ。
頬に触れたら胸が高鳴った。
きっと、触れられたら私は綺麗になる。

でも起きなくてよかった、と思ってしまった。


そうして、わたしはいえをでてでんしゃにのったのでした。