かっこいいおねえさん。

世の中、悪い人はいるもので昨日も閉館間際に小学生の女の子が「差してあったじてんしゃのカギがない」と青い顔で戻ってきたのでそれに付き合ってみんなであちこち探し回った。

館内の床、書架の隙間、トイレの中、ごみばこ………外の駐輪場を見に行っていた先輩が「隣のうちの塀の向こうにそれっぽいのがある」と言うので見に行くと確かに塀を隔てた裏庭にキティちゃんのキーホルダーがついた自転車の鍵が落ちていた。

誰かが悪戯で抜いて裏庭に放り投げていったらしい。

憤った私は何にも考えず、よっ、と出っ張りに足をかけると身を躍らせて一気に塀を飛び越えて着地、鍵を拾って少女に渡すと「あ、これ!」と言うので
悪い人がいるんだから鍵は必ず抜くこと、ね!と先輩が優しく言ってバイバイしてようやく一安心、息をついた。

これはそのすぐ後の会話

「はぎこさん、じゃあ私たちも帰ろっかー」
「………」
「それにしても悪い人もいるものだよね!」
「………」
「ん、どうしたの?」
「久々に、頑張ったら両腿がつって、いたい」



かっこいいおねえさんへの道は遠い。