ネコ缶。

今見たばかりの夢、忘れないうちに書いておく。


バラエティー番組を見ていたら急に「私が体験した恐い出来事」を話すコーナーが始まり女性が前に立って話をはじめた。



「それは、私が女子大生だったときの話です。
彼氏と飲みに出掛け、少し羽目を外して飲み過ぎた私は彼に半ば抱えられるようにして歩いていました。

そのうちに、いつも通り道にしているちょっと大きめの森林公園のなかに入って
そこはかなり薄暗かったんですけど電灯がぽつりぽつりとあって砂地がところどころ丸く明るく切り取られるような感じで
私は酔った頭だったのですがなんとなく恐くなって抱えてくれている彼の腕を強く掴みました。

…その時でした、彼が「ギャッ」と叫んで後さずりをしたのは。
支えられていた私はバランスを崩し、思わず尻餅をついてしまいました。
「痛い!なによ急に」と文句を言おうとして彼を見上げると、青ざめた顔で「猫が…猫の頭が…」と言うので何を言っているのだろうと彼の目線を追った私も、凍りつきました。


猫の頭でした。
猫の頭が何十も、ずらっと丸く切り取られた砂地に並べられていたのです。


さらに異様なことに、猫の頭の下にはジュースの空き缶が立っていました。
つまり、猫の頭は空き缶のうえに乗せられているということなのでしょうか。
あまりに猟奇的な光景に私と彼は固まったままでいたのですが、私たちは猫たちの頭が小さく震えていることに気が付きました。


かりかりかりかり…うにゃおおおおぅ……


鳴き声がする……生きている、猫は生きている!
猫は生きたまま体を空き缶に詰められていたのです!

私は震える手で鞄から携帯電話を取出しカメラモードにするとその不思議な光景をカメラに撮りました。
何やってるんだよ、気持ち悪いから早く行こう、と彼に引っ張られたので写真は一枚だけでかなりぼけてしまったのですが、これがその時の写真です……」



女性の携帯電話にはピンぼけの猫の頭のアップとその下にコカ・コーラの缶の縁らしい銀色と赤がちらっと見えていて、会場はキャーッと大騒ぎになった。
司会者の男性は「これはすごいですねえ」と真面目な声で言うと、急におちゃらけた顔になった。

「番組では、この現象について検証してみました!」
へたくそな単色塗りのCG画像の絵にパッと切り替わる。

「まずは空き缶をたくさん用意しましょう。

空き缶の上部は缶切りで丸く刳り貫いたあと角のギザギザを削りましょう(猫がケガしちゃうからネ!)。

用意ができたら缶を地面に埋めて猫がこの落し穴に落ちるのを待ちましょう。

猫が穴に落ちたらネコ缶の出来上がりです、チャッチャラー♪」


台無しだ、と思って目が覚めた。