たいたいの、よ。

帰りの電車で隣に座った母子
子供は二、三歳くらいのちいさな女の子で、おねむの状態から覚醒したばかりなのかのぽやぽやした様子で向かい合うようにだっこする母親に「ままー、ちゅっ、ちゅ」と首筋に抱きついていのが
本を読んでいる目の端にちらちら見えて微笑ましく思っていたのだけれど、それが次第に不思議なことになっていった。

「たい!たいよ!おかあさん、たいのよ!」
母親のちょっと強い声がしたのでどうしたのかと見てみると子供が母親の鎖骨辺りをちいさな手でぎゅうぎゅう押しつけていて、それがわりと痛いらしい。
「むう、むう」と子供は軽く機嫌の悪そうな表情でぎゅうぎゅうぺしぺし鎖骨下らへんを攻撃し
「たい!たい!」と母親が子供の背中を軽くばしばし叩いて叱って
とうとう子供は「うわーん」と泣き声をあげた。
すると母親が「それ泣き真似でしょ、やめなさい!」とぴしゃりと言い
えっ、ちょっとひどくない!?と思わずぎょっとした瞬間子供はぴたっと泣き真似をやめてまた「むう、むう」とふくれたのだった。
なんかとにかくよくわからない感覚に陥った光景。