世界の半分をおまえにやろう

うちの図書館で児童対象に読書記録カードを配っている。
そのカードには題名と簡単な感想を書く枠が引いてあるので、家や図書館で本(雑誌や漫画はのぞく)を読み終わったら記入してカウンターに持ってきてもらう。
持ってきたら職員がハンコを押してあげて、そのハンコが100ポイントたまったらいっこレベルアップ、レベル3から認定証を発行してあげる、というシステムだ。
一学期からはじめて、当初はレベルアップとか子供だましかなーと思っていたのが
意外に子供たちの食いつきがよく、夏休みになってもポイントをためるべく来館する子がたくさんきて、レベルアップ制考案者としては嬉しい現象といえる。
嬉しいは嬉しいのだけれどもしかし、悩ましい点がいくつかある。

まず大変なのがポイント付けの作業だ。
一日に何人もやってきたり、一日に何回もポイント付けを頼まれるとそのたびに相手をするのでカウンター作業が滞る時がある。
なので夏休みのポイント付けは一人一日一回までにした。

次に困るのは、読書の記録を付けるという目的ではなくポイントを集めるということが楽しくなってしまって、読んでいない本や目についた本のタイトルを書いてくる子が現れることだ。
これはレベルが上がれば上がっている子ほど顕著に現れる。
友達と競い合っちゃってる子がいるとさらにすごくて、片方が先にレベルが上がったりするとなぜかこっちが「なんで!」と怒られたりする。
そんで山ほど書いた感想を持ってポイントを要求しにくるのだ。
そういうのはだいたい感想が適当だったり、明らかに読めないような難しい本を書いてきたりするのですぐにわかる。

なので、たまにそのダメな意識をへし折ってやるべく意地悪司書になって意地悪な質問をする。
「へー、『冒険者たち』読んだんだ!すごいねー!主人公の名前はなんだっけ?わかんないのかな!昨日読んだばっかりだよね!…ガンバだよ〜、何の動物だったっけ、ねずみだよね〜」(二年生女子相手に)とか
「『グレンラガン』の一巻読んだんだ、中高生向けの文庫本だよね!一巻てどこで終わるんだっけ?…全部ちゃんと読んでからじゃないと感想書いちゃダメだよ!ちなみに一巻はカミナ兄貴が死んじゃうとこで終わるんだよね!アニメ見た感想じゃだめだよ!」(四年生男子相手に)とか
「『天地を喰らう』は漫画本だぞう!」(五年生男子)などなど
私ってばチクチクいやらしい奴!とつくづく思いつつ司書はちゃんと感想も本も読んでるんだからね!というのを匂わせる。

そして最後、今まさに悩んでいることなのだけども、認定証は私が適当にエクセルで作っているのだが、作り始めた当初「レベル6くらいまで行く子はいないだろうけど、作っておきゃ到達しそうな子が万一出ても一年くらいかかるだろー」と思ってレベル6までしか作っておかなかった。
しかしそれが七月の半ばに到達する子が現れてしまったのだ。頑張りすぎだよ!
じゃあさっさとレベル7以上の認定証を作れよっていう話なのだけど、実は、認定証に書く文面がネタ切れしてしまってこれ以上の誉め言葉が考えられなくなってしまったのだ!

レベル3→たいへんよくできました
レベル4→すごい記録です
レベル5→名人級です
レベル6→達人級です

あまりに早く名人、達人を使っちまったヨ!
これ以上の称号は思いつかないことはないけども小学生にはわかりづらいだろうし、『読書の神様』の称号を与えるにはちょっと内容が至らない(ポイントために走りすぎてる子なので)……
いろいろ考えた挙げ句結局レベル7は「免許皆伝」ということで打ち止めにすることにした。
打ち止めにはしたのだが、裏面に小さく「二周目にチャレンジだよ☆」と書いてみた。
クリアしたと思ったら一面からやり直しの魔界村方式だ!!


もうすぐレベル7に到達する、その時の彼女の反応が今からとっても心配なのでせめて読書記録カードは別デザインに作ってあげようカナ、と思っている。



ちなみにドラクエで、魔王が「仲間になったら世界の半分をおまえにやろう」というのに「はい」を選ぶとスタート位置に戻されてレベル1からやりなおしになるんだそうな。