無神経に吹き飛ばす

軽く悲しい気持ちで眠りについた朝、電話で起こされた。
片思いの人から電話なんてはじめてだったから、戸惑った。

戸惑ったけど、脚立を借りたいという短い内容の用件だったけど、好きな人に頼られるのはなんか、いい。
夜中ずっとしていた他の人との長電話が吹っ飛んだ。
やっぱり無理
なのでいつまでも栓がないだだながれの恋をしていようと思った。



脚立を取りにきた片思いの人は顔と手が血で真っ赤になっていた。
血塗れですね、と朝から笑った。
これからちょっと自殺してくるんで、と好きな人も笑った。
白い冷たい朝靄にのばしっぱでまっすぐな黒い髪と髭と赤い血がなんてよく似合うんだろうと思ったら、これは夢なのかもしれないと思った。
脚立は今夜返しにくるんで、そう言って階段を降りて靄の中に消えた。

今夜会えるんだ、なら今日のバイトは残業しないで帰ろうかな、お茶の葉と和菓子も買おうかなと思った。
豆大福かカリントウか、りんごチップを買おう。
蜜柑もある。
炬燵もだしたからきっとよくあう。

人をもてなすのはすき。
今日は部屋を片付けよう曇りだから洗濯は出来ないけどいっぺん少し寝て、起きたらなにもかもやろう。
起きたら。