マチ町に住む女の話

マチ市という市にマチ町という町があって
マチ町の駅のそばの四階建てのアパートの四階の右から二番目の部屋に
こうべ作りの見習いの女が住んでいた。

こうべ、というのはしゃれこうべのことで
女はマチ町に住む狐たちが美女に化ける際に用いる頭蓋骨を作っているのだった。
美女に化けるために狐は人間の髑髏を被り北斗を拝していたのだが
マチ町の役場から本物を用いるのは気分的に見ていて気持ちのよいものではないからと文句をいわれたので
当時職がなく暇であった女に仕事が与えれた。

ユキオというその女はがさつで大雑把なところがあったが
手先は器用な質でそんな彼女の作るこうべははじめのうちは
化けたら鼻が曲がっていたとか目が離れすぎているとか狐から色々文句が出たが
町では顔かたちのどこか微妙におかしなところが逆に魅力的な美女が現れるようになった。
ユキオは町にひとりだけのこうべ作りだったがいつまでも見習い止まりであるだろうと思われ
実際彼女の部屋には不完全なこうべがごろごろしていた。