かわいいいきもの。

新宿で「間宮兄弟」を観る。

ビール工場で働く兄の明信と、小学校で用務員をやっている弟の徹信は二人暮し。
二人で仲良くビデオを観たり、野球を応援したり、商店街をフルーツジャンケンしながら餃子を食べに行ったりしている。
そんな二人がある日カレーパーティーを開いて行きつけのビデオやの店員のナオミちゃんと小学校の依子先生を招待することを決意するが、女性を誘うなんてしたことがない二人はとにかくいろいろがんばるのだった。

「いい人だけど、恋愛対象外」な間宮兄弟がとても可愛くていとしくて温かい映画。

恋愛をしようと思うのだけれど、なぜか恋愛は周りの人々の回りだけで起こっていていつのまにか自分は複雑な渦の外側でのんびりしているような、そういう人はときどきいる。
間宮兄弟もキュートなナオミちゃんや天然でセクシー依子先生や人妻のさおりさんにときめくのだけれど、彼女達はみんな好きな人がいて、それぞれ複雑そうな悩みを抱えている。

恋愛ができない人にとって悲しいことは「ひとりである」自分を感じてしまう瞬間ではないだろうかと私は思う。

まわりがみんなカップルだらけで毎日悩んだり喜んだりしている中なんだか取り残されて
とにかく好きにならなくてはいけないぞ、好きな人を作らなくてはなんだかさびしいぞ、と強迫観念に陥って
ひとりだと悲しくってやりきれないわー、とごろごろ布団を転げ回って恋愛とかしてみたいよーと呟いたり
ひどいときには、誰にも好きになってもらえない自分はどこかおかしいのではないかと思い込んで勝手に沈んだりしてしまう。

でも今回、まるで恋愛がするりと傍を擦り抜けていっているような間宮兄弟の生活はものすごく羨ましく見えた。
間宮兄弟は毎晩ふたつ布団を並べておしゃべりや一日の反省会をしながら寝るくらい心の距離が近い。
離れて暮らしている母親と祖父母に対しても、子供のままみたいに素直で無邪気に振る舞っている中に思いやりもちゃんと伺えて本当に微笑ましくて素敵な家族なのだ。

特に兄明信が、自棄になってあばれる弟徹信をなだめながら塩むすびを作ってあげるシーンがよかったと思う。
にゅっ、にゅっ、と手際よくむすばれた形のいい、美味しそうな塩むすびを無言で弟が沢庵と一緒にぽりぽり音を立てて食べてそれを向かいに座っている兄が眺めているのを見ていたら
やさしいなあ、本当にやさしいなあ、こんな思いやりのある人が近くにいて趣味も合って楽しく生活出来るなら恋人なんていらないかも知れないなあ、と思ってしまった。
二人でいてよかったね、と本当にそう思ったのだった。
さびしさの入り込む隙間を感じない生活は理想に近い気がする。
それから、友情のハグのシーンも男女の垣根を擦り抜けて心が通い合う様子がじんわりうれしくなる感じでよかった。
こんなやさしい女の子が傍にいてよかったね。

キャストもみんないとおしくなるような人々ばかりでほんわりとした映画だったのでした。
ああ、それにしても佐々木蔵之介さんはかわいいよ、かわいいよ!
面倒を見る塚地さんもぷりぷりしててかわいいよ!
二人あわせてなんか別のかわいい生きものみたいだ。