月と自転車

自転車を漕いでいたら月と目が合った。
月が一足先をいくのでだんだん日が暮れる暗い道も案外平気に思えた。
スカートがいくら直しても膝上にあがってしまうのが疎ましかったが辺りが暗くなっていくにつれてどうでもよくなった。
ペダルを踏む音と息の音と風の音しか聞こえず、たいそう気分が良かった。
しらじら月はひかってときどき鉄塔や木の枝やガスタンクに刺さったりしていた。
真っ暗になるまでには帰ろうと思ったが、月が先に行くので帰れない。
背を向けたら途端に恐くなった。