夢日記

五つの国の話の続きを久しぶりに

私は幼い、小さな小娘に過ぎなかった。いつも微笑みを絶やさず飄々としているあの方は、どのような苦境に落とされたとしてもすぐさま驚くべき秘策を生み出して皆を、あの地の底の地獄のような戦場から地上へ導いてくれるものだと思っていた。机に両肘をつき…

ねこの玉子

ねこのたまごをいただいた。幼児の握りこぶし大の白くてつるつるした球体を、まっさらな木綿のハンカチをしいたざるに入れ床の間の涼しい辺りに置いておいたそれは 何日かしたらだんだんうっすら子猫の顔めいたものが浮かび上がってくるようになり、たいそう…

背骨剣。

ある日、背骨から剣が抜けた。乳白色のその色は私の骨なのだろうか ときどき 淡く光を発した。光を発するのは私の調子の良いときで 敵も気持ち良く 切り伏せることが出来た。調子の悪いときは まるでだめ 寿命の切れた蛍光灯のようにくすんだり 折れたりした…

消えたのだ。

夢の消える瞬間をみた。夢を見て起きたあと微睡んでいる間、さっきみた夢を忘れないように何回も反芻しないと忘れてしまうから何回も思い出そうと思っていたのに消えてしまった。ひとつひとつの出来事がPS2のメモリーカードのセーブデータを削除するように、…

初夢。

祖母とチャイを飲みに行く途中の海岸に、ぬるぬるした子鯨が打ち上げられていた。茶色と緑の子鯨は油がにじみ出ているのか、日に当たってきらきらしていた。人々が海に押し返してあげようとするがぬるん、と滑ってふてぶてしいようにも見えてきた。鯨はその…

心中。

寛一が都に心中しようと言われて首を絞められた。あっけなく寛一はしんだ。都の来ていた赤い服が女郎の肌着のようだなあと思いながらしんだ。都もしんだ。折り重なる二人を発見したのははるかだった。恐いこわいと思いながらも近づいてみると急に寛一の目が…

実験

輪切りにされた。くっつけて押さえておいたら直った。実験された。ヨウ素液に漬けられたりローラーで薄く伸ばされたりした。ぶにゃぶにゃとしてしまった。

お休みの国。

子供だった。夏休みだった。建設会社の事務所で友達三人と果物皮剥き競争をした。林檎と柿と西瓜と梨。柿が一番剥きづらく西瓜が一番切り分けにくかった。果物は甘くてみずみずしい。秋には家族旅行をした。大きなPAで私と兄は漫画を買った。うちに帰ったら…

火星。

今年も、火星が近づくというニュースがながれた。火星が町にもっとも近づく一年でもっとも寒い日に演劇の公演があった。座長は藪睨みで一見強面だけれども、笑うと柴犬のような暖かさが溢れるよいおとこで看板役者は二枚目というよりは愛敬のあるおとこでい…

続きはつづく

内Pの打ち上げに参加する夢を見た。チョイ焼きめんたいを食べた。ゴルさんと柱をはさんでにらめっこをした。楽しかった。場面が変わってら高校の教室で模試を受けていた。全然わからなくて焦っていたら子宮が痛くなってきて脂汗がでた。まだ二問目を解いてい…

お金持ちの彼女

お嬢様とデートをした。二人で植物園に行った。蒸せるくらいの湿気とたくさんの緑にくらくらしながら、蒸気で輪郭のぼやけるお嬢様を可愛く思った。お嬢様は尖ったところのない柔らかいかたであったが柔らかさゆえ鈍いところもあって、今日は私とデートをし…

噛ミ付ク

最近夜中近くになると気分がどろどろとして胃もどろどろになって困るようになった。何を食べたらよいのかわからず口をあぐあぐ動かして布団のうえをうねうねと動いて手近にあった腕にはぐりと噛み付いた。腕は太い血管を持つ男の人のもので、歯がじわりと潜…

逃げ切れるかな

長いこと瓶に詰められていた。私を瓶に詰めていたのは誰なのか親なのか悪代官のようなひとなのか、ある日青年がきて瓶の栓を開けて私を連れて逃げた。はじめ私はとても小さくて(瓶に詰まるほど)淡い緑の燐光を放っていたのだけれど青年と一緒に逃げている…

懐かしい夢をみた

存在しない別の時間軸で、中学からの長い長い片思いは実っていて私は先輩と一緒にいた。部屋に二人で何をすることもなくぼんやりしているところに来客が来た。来客は、存在しない先輩の姉で彼女とは以前違う場所で会っていたので会えて嬉しかった。もう一人…

金色のねこいぬ

白い部屋にいた。 引き戸を開けたら月だった。 波が静かに線を作る海に、ぶれていた。揺れていた木の葉に乗ったらぶんと宙に浮かんだ。 どこまでも高く浮かんで宮殿に着いた。 三叉路になっていたので左手に進んだ。 突き当たりにあった宝箱を開けたらアヌビ…

先生にあう

先生に頭を撫でてもらった。絵を描くのが好きならひとつ、頼みたい仕事があるんだけど後日連絡するわと言われてどきどきとした。紙に携帯番号を書こうとして思い出せず12ケタの数字を書いたりした。赤いスケッチブックを胸に抱いて何度も先生に頭を下げた。…

ながれとぶ

1口のきけない妹と電車に乗った。 兄の私の肩に軽く頭をのせて低い旋律を頭のなかに響かせる妹の 黒い髪と丸い目のなかに窓から見える海が流れた。 海におりるか、と聞くと目線は変えずに頭がふるふると横に振られて肩がほのかに暖かくなった。 2魔法のじゅ…

あまうま。

コアントロー漬けの梅酒を飲んだ。実在するのかは謎、だけれどもたいそう甘くて深くておいしいものだった。ゆるいオレンジ色の液体のなかに梅が赤い核になって沈んでいて杏だったのかもしれないけれどめ見た目にも美味しいものだった。

ぞろぞろ

見知らぬ紳士とホテルに入る。チェックインは六名様ですね、とフロントが言うのを紳士は聞き逃していたので適当に返事をして鍵を受け取って部屋に入った。部屋は民宿みたいな部屋で、カーペットに畳の部屋だったので紳士はたいそう不満そうだったが部屋が広…

すらりとにやる

頭の禿げた黄色い肌の男の側頭を両手のひらでぺちぺち叩きながら「あこはどこだ、わこはだれだ、あこはどこだ」と問い続けた。手のひらの感触がぺたぺたとしてきて段々わけがわからなくなってきた。あこは私の恋人で私は男の子だった。禿げた男は肌一面に赤…

空にトぶ。

どこまでも続く紅い雛壇に雛人形を並べていたら鮮やかなセルリアンブルーのトンボがたくさんたくさん飛んできた。等間隔に隊列を作って空がセルリアンブルーの縞模様になった。セルリアンブルーの蛙が一匹肩に乗ってきたので触ったら案外さらさらとしたもの…

おやくにたちます

おすぎに「正直、文系の人はあまり役に立たないので図鑑で調べてシャベルをどうにかして作ってちょうだい」と言われた。

右にキて

右耳は駄目だというのに、生温いものが入り込んできたので体は丸くなった。額と目が可愛いねと言うのでたいそう小さくなった。空気がしぼむように漏れた。生温いものは柔らかいものだったので右耳から右半身が痺れて、やだ、とゆったけれどたいそう気持ちの…

飴色。

べっこう飴色の川がなみなみとしていたので川岸の縁に座り込んで眺めていたら川はたいそう大きな川だったのだけど、ぼやりと見える向こう岸は左から右にどんどん流れてどんどん風景が流れるのでだんだん流れているのは自分のほうな気もしてきたけれど流れて…

しぼれやしぼれ。

小学校六年生の修学旅行は夕暮れの海だった。バスから降りて駐車場から砂浜に向かう途中担任はゴルゴ松本でゴルゴは時々竹中直人にすり替わってとにかく濃いなあ、がまだ駐車場なのに集合写真を撮るといった。お前が撮れな!とカメラを渡されたのでチーズの…

君は当たり前

洗濯物を取り込んでベランダから部屋に戻ると前取り込んだ洗濯物はもうきっちり畳まれていて今取り込んだ洗濯物を渡してまたベランダに出た。部屋の中をこっそり覗くとあぐらをかいて座り、てきぱき動いているわけでなく服を撫でるように手が動いていつのま…

夕日に叫べよ

夕暮れの海辺にいたら遠くから誰かが蟹股で走ってくるので誰かいなと思ったら番長みたいな格好をしたガチャピンと三つ目が通るの写楽(絆創膏なし)だった。「旅館用意してるからさあ、いこうよ!」と言われて服の上から浴衣羽織らされて両脇から抱えられて…

乾ク。

ひとりごちられよ、と声がしたので湖の端にしゃがみこんで水面を覗いたけど ぬめっこそうな深緑と焦げ茶色のもやもやしか見えなかった。 ひとりごちられよ、と声がしたので振り返ったら赤と黒の混ざった霧がたちこめていてその奥に小さい人影が見えた。 星の…

悲しくなるのです

彼が地面に落ちていた私の頭を拾って言いました。 「この顔でなければ好きになっていたかもしれないが、どうにも駄目だどうしても好きになってあげられないのだ」 私は目を閉じてそれを聞きながら、私の両耳を包むように抱いてくれている手のひらの暖かさを…

卒業式。

中学校を卒業した。卒業式の予行練習。隣のクラスのツチヤさんだけ小豆が煮しまったような色に光沢がはいって玉虫色に光るブレザー着させられててマジ切れして校長に「中途半端な優しさはいりません!」て叫んでたけど明らかに罰ゲームで着させられてるよな…