お金持ちの彼女

お嬢様とデートをした。
二人で植物園に行った。
蒸せるくらいの湿気とたくさんの緑にくらくらしながら、蒸気で輪郭のぼやけるお嬢様を可愛く思った。
お嬢様は尖ったところのない柔らかいかたであったが柔らかさゆえ鈍いところもあって、今日は私とデートをしているのだよということに気付いているのだろうかともやもやしたが次第にどうでもよくなった。

植物園の隣には美術館があり水墨画が展示されていた。
お嬢様と私は壁一面に描かれたたいそう大きな水墨画の前から離れられなかった。

大胆にして、繊細。


灰色であり土色のようでもある絵は緩やかに渦巻きで正直何が描いてあるのかよく分からなかったがお嬢様と私は飽きもせず見上げていたずっと閉館まで。

帰り道に旧友に会い立ち話をした。
隣にいる可愛い娘は誰だと言うので、お嬢様だよと言おうと思ったら私は今日からあなたの彼女なのよね?と首を斜めに傾げて私を見上げていたお嬢様がいた。
またデートいたしましょう。